「偏愛マップ」書籍名:偏愛マップ著者名:斎藤孝 出版社:NTT出版社 感想:講演会で買った「偏愛マップ」 100頁ほどの短い本なので、講演会帰りの電車の中で半分近く読んでしまう。 サブタイトルは「キラいな人がいなくなるコミュニケーション・メソッド」 ホントにきらいな人がいなくなるの? 半信半疑で頁をめくる。 偏愛マップとは何か。 自分が“本当に”好きなものを、1枚の紙に書き込んだマップのこと。 ちょっとくらい好きではダメで、偏って愛するものを書き込んでいくところに、面白さがある。 人は一面だけではなく、さまざまな嗜好を同居させている。 苦手だと思っていた人や、初対面の人でも自分の趣味とリンクしている部分があるかもしれない。 もし無くても、相手の嗜好を知れば、なんとなく親近感がわいてくる。 そういったところから、お互いを知り理解しようとするのに、この偏愛マップはとても有効なのだ。 この本では5人の有名人の偏愛マップを、著者自身が考えて載せている。 岡本太郎、向田邦子、寺山修司、ジョン・レノン、坂口安吾の5人である。 知ってるようで知らなかった、有名人たちの偏愛ぶりが面白い。 例えば岡本太郎。 大阪万博の太陽の塔や「芸術は爆発だ」などの言葉から、かなりエキセントリックな変人というイメージが先行していた。 しかし、この偏愛マップを見ると、それは彼の一部分でしかないことに気付く。 漫画家・岡本一平と作家・岡本かの子を両親に持つ太郎は、19歳の時に両親と一緒にヨーロッパに渡る。 そのまま単身パリに残り、その後10年間留学生活を送る。 フランス語はもちろんのこと、人類学・民族学、カント哲学を学ぶ。 爆発した人と言うより、かなり知的な人物だとわかる。 また爆発についての、彼の説明が秀逸。 「爆発というと、みんなドカンと大きな音がして、物が飛び散ったり、血が流れたり、何かが破壊される、そんなイメージを描く。そんな不潔な、卑しいものじゃないんだ。ほんとの爆発は音もなく、パーッとエネルギーが宇宙に向かってひらく、無償で、無条件。僕の爆発はそういう精神の炸裂なんだよ。」 (斎藤孝「偏愛マップ」NTT出版より抜粋) 偏愛マップには、この言葉まで書いてはいないが、「マルセル・モース」「カント」「民族学」「人類学」「哲学」などの単語から、岡本太郎の知的な部分が炙り出されている。 私自身も、映画が好きなのだが、ハリウッドものはほとんど見ない。ヨーロッパやアジア映画をよく見る。 初対面の人などに「趣味は映画鑑賞」というと、必ずと言っていいほどアメリカ映画のタイトルを出し「見ましたか?」と尋ねられる。 自分の偏愛マップを作って、自己紹介のときに使うのも、一つの手かなと思った。 偏愛マップ |